CURALOGUE|vo2.IVYsan

CURALOGUE|vol.02

アイビー
kazuki sugimoto さん
CURALOGUE(キュアローグ)は、"CURATE(キュレート)"と"DIALOGUE(ダイアローグ)"を組み合わせた、新しい対話のかたち。 様々な分野で活躍するゲストをお迎えし、彼らの視点を通して商品や暮らしの魅力を深く掘り下げていきます。

対話の中で生まれる気づきや感性を共有することで、プロダクトの新たな価値やストーリーが浮かび上がります。 "語り合う"ことで伝わる特別な体験をお楽しみください。


第2回のCURALOGUE(キュアローグ)でお迎えしたのは、インフルエンサーとして活動するアイビーさん。Vitraの期間展示を開催していたタイミングで、東京・外苑前のリアルストア「MAARKET トーキョー」にご来店いただきました。
その場その場で惹かれたポイントや率直な感想を伺いながら、プロダクトと向き合うアイビーさんならではのまなざしが印象的なひとときとなりました。

Vitra

「やっぱりいいな」名作と向き合うとき
最初にアイビーさんの足が止まったのは、Jean Prouvé (ジャン・プルーヴェ)が手がけたテーブルランプ LAMPE DE BUREAU(ランプ ド ビューロ) 。 落ち着いた佇まいの「ブルー・マルクール」に惹かれた様子で、「ブルーがすごく好きなので、思わず手が伸びますね」と微笑まれました。
このランプは、フランス・ナンシーの学生寮のためにデザインされたもので、一枚のスチール板を曲げただけという、極めてミニマルな構造。 装飾性を排しながらも、どこか温かみを感じさせる佇まいは、プルーヴェの合理的な美学を体現しています。

「仕事中にも、読書のときにも寄り添ってくれそう」。 そう語るアイビーさんの表情には、日常に自然と溶け込むこのランプの姿が、すでに思い描かれているようでした。
次に立ち止まったのは、同じくJean Prouvé (ジャン・プルーヴェ)の名作、STANDARD CHAIR(スタンダード チェア)。 その前に立つと、アイビーさんは思わず「やっぱりいいな〜。買ってしまおうかな!?」と笑顔を見せました。
この椅子の特長は、構造的にもっとも負荷がかかる“後ろ脚”に着目し、太い中空の鋼板を使用した点にあります。 前脚は軽やかなスチールチューブで構成されており、建築・工学・デザインが融合した、プルーヴェならではの思想が反映された一脚です。

その隣には、同じくプルーヴェがデザインしたダイニングテーブル GUÉRIDON(ゲリドン)も展示。 当時主流だったスチールやガラスとは異なり、無垢材でつくられたこのテーブルは、ナチュラルな素材感を保ちながらもモダンな空気感を纏います。 天板下のバーと湾曲した脚を連結させた構造も、力を分散させる設計思想に裏打ちされています。

素材そのものの「声」に耳を澄ます
アイビーさんがもっとも強く惹かれるのは、「素材そのものの魅力」だと言います。 「素材が持つ独特の表情に、心が動かされるんです」と語ってくれました。
その視点で特に惹かれたのが、Jasper Morrison (ジャスパー・モリソン)による CORK FAMILY(コルク ファミリー)。 リサイクル可能な天然素材・コルクをぎゅっと凝縮し、素材の質感を活かしたこのシリーズは、見た目だけでなく、触ったときの滑らかさや軽さ、耐久性も魅力です。 アイビーさんは「素材の個性が感じられるものは、暮らしの中で特別な存在になる」と話しながら、触れるたびにその魅力を再確認しているようでした。

“かたち”の奥に宿る、思想の美しさ
プロダクトに惹かれる瞬間、その理由は“かたち”や“色”だけでは語りきれないことがあります。 それは素材の手触りであったり、構造の必然性であったり、身体にどう響くかといった、もっと根源的な感覚かもしれません。
イサム・ノグチの NOGUCHI DINING TABLE(ノグチ ダイニング テーブル)は、まさに“彫刻家が手がけた家具”。 一本脚のベースからクロームのバーが放射状に伸び、宙に浮いたような軽やかさを感じさせながらも、しっかりと床にグリップしています。 一見シンプルで静かな造形ながら、目を凝らすほどに内に秘めた張力が現れ、空間に凛とした存在感をもたらします。

このテーブルに Verner Panton (ヴァーナー・パントン)の PANTON CHAIR(パントン チェア)を合わせたとき、静と動、直線と曲線、有機と構造という異なる要素が、見事な調和を見せてくれます。 パントンによるこのチェアは、世界初のプラスチック一体成型椅子。 身体のラインに沿ってなめらかに波打つそのフォルムは、見る角度によって表情を変え、光を受けて柔らかく反射します。
ノグチがテーブルに託した“空間と彫刻の交点”と、パントンが椅子に込めた“未来の暮らし”へのビジョン。 それぞれが異なる文脈から生まれながらも、並べた瞬間、自然と会話が始まるかのような感覚。
理屈を超えて、「これはいい」と思わせる説得力が、そこにはあります。

日常素材に、静かな革命を
そんな「素材」と「思想」が響き合うプロダクトとして、もうひとつ忘れたくない存在があります。 それが、建築家 Frank Gehry (フランク・ゲーリー)によって1972年に発表された WIGGLE STOOL(ウィグル スツール)
このスツールの素材は、なんと段ボール。 私たちの身近にある紙素材を重ね、カーブを描くようにカットすることで、やわらかなうねりと構造的な強さを併せ持った彫刻的なフォルムが生まれました。 “段ボールがこんなにもエレガントになるなんて”──思わず、そんな驚きがこぼれるアイテムです。
ゲーリーが挑んだのは、「高価な素材に頼らず、日常の素材に美を見出す」という思想。 実用性だけでなく、そこに込められた哲学があるからこそ、座るたびに少し誇らしい気持ちになるのかもしれません。

アイビーさんは「スツールとしてだけでなく、オブジェを置いたり、アクセサリーの定位置にしたり……」と、自由な発想で日々の空間に取り入れているのだそう。 その姿はまるで、彫刻作品のように部屋の中に静かに佇み、けれど確かな個性で空気を動かしているようです。
ナチュラルな空間にも、モダンな空間にもすっと溶け込みながら、確かな存在感を放つウィグル スツール。 小さなアイテムひとつで空間の空気を変えてしまう、“デザインの力”をあらためて感じさせてくれる名作です。
プロダクトの背景にある思想や、素材がそっと語りかける声に耳を澄ませること。
空間と対話するようにモノを選び、使い続けるうちに、ふとした瞬間に「やっぱり、これが好きだ」と思えること。
アイビーさんとCURALOGUEで交わした会話は、そんな“暮らしとデザインのつながり”を改めて思い出させてくれます。

アイビーさんが 「MAARKET トーキョー」 にて実際にアイテムをご覧いただいた様子は、こちらのYouTube でご覧いただけます。
Yu_ta
アイビー

UAで最年少店長クラス、セールスマスターとしてのキャリアを積んだ後、自身のブランド『SANTAKU』のディレクターに就任。 "オシャレを日々のスタンダードに"をテーマに、SNS総フォロワー15万人超の各媒体で、日常に取り入れられるファッションのヒントを発信。 ドメスティックブランドを中心に、ブランドの魅力を伝え続けている。
株式会社TIBREAK代表

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