デザインジャーナリストの土田貴宏さんのコラム「INSIGHT」の連載がスタート!

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ストックホルム・デザインウィーク

INSIGHT

Takahiro Tsuchida

vol.01 2020.11.20

豊かなクリエイションを発信するもの、こと、人、場所をデザインジャーナリストの土田貴宏さんの目線で捉える“INSIGHT”。
毎月20日の更新で世界のデザインのあれこれをお届けします。

土田貴宏
土田貴宏

ライター/デザインジャーナリスト。2001年からフリーランスで活動。プロダクトやインテリアはじめさまざまな領域のデザインをテーマとし、国内外での取材やリサーチを通して、「Casa BRUTUS」「AXIS」「Pen」などの雑誌やウェブサイトで原稿を執筆。東京藝術大学と桑沢デザイン研究所で非常勤講師を務める。
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ストックホルム・デザインウィーク

今年2月、スウェーデンのストックホルム・デザインウィークへ行きました。その後のデザインイベントが軒並みキャンセルになるとは、まだ誰も想像していなかった頃です。2月恒例のストックホルム家具照明フェアも、すでに来年度は見送りが発表されています。そこで、ちょっと時期外れですが、2020年の数少ないデザインウィークのひとつになってしまった機会の記録として、ストックホルムで訪れた場所や展示を紹介します。

ストックホルム・デザインウィーク

これは、ベッドリネンを中心に家具も発表している新進ブランド「MAGNIBERG」のショールーム。ファッションの経験を積んだデザイナーによる独特の折衷感は、個々の素材やフォルムはオーソドックスでも、その組み合わせの妙に鋭い個性があります。また伝統的な家具はじめさまざまなテイストのアイテムと共存できる汎用性から、長く使いつづけることができます。日本での展開が楽しみなブランドです。

ストックホルム・デザインウィーク

自ら手づくりする無垢材の家具に加え、デンマークの「FRAMA」のアイテムも多く取り扱う「DRY STUDIOS」。北欧に限らず、自然な風合いに仕上げた木の家具はインテリアの中でますます存在感を高めていますが、このスタジオの作風もそんな傾向に沿ったものです。

ストックホルム・デザインウィーク

小規模ながら徐々に知名度を高めている「PERSPECTIVE STUDIO」。インテリアデザインを手がける彼らのアポイントメント制のショールームを訪れました。オリジナルの家具のほか世界各国のアンティークや自然のオブジェも取り扱い、長大な時間軸で空間構成を捉えていることが伝わります。照明はニューヨークの「APPARATUS」のもの。

ストックホルム・デザインウィーク

グラスや陶磁器のデザイナーとして知られるCarina Seth Anderssonのショップ「CSA」は、オープンしているのは木曜日の午後だけで、彼女自身が接客します。日本でも人気のある簡素な器のほか、彼女にインスピレーションを与える北欧や日本などのアンティークも並んでいます。

ストックホルム・デザインウィーク

1889年創業のスウェーデンのカーペット・ブランド「KASTHALL」のショールームでは、著名なインテリアスタイリストのLotta Agatonが展示を手がけました。中央に吊り下げられたのは2020年の新作「POETRY」。KASTHALLはハンドメイドの上質なカーペットで有名ですが、製造過程での残余素材を活用した製品もラインアップしています。

ストックホルム・デザインウィーク

今回のストックホルムは3泊のみという短期滞在につき、アクセスのよさを最優先して市街中心部のGRAND HÔTELに泊まりました。いちおう市内で最もクラスの高いホテルのひとつですがオフシーズンにつきリーズナブル、もちろんデザインウィークだからと値上げすることもありません。

ストックホルム・デザインウィーク

ここからはストックホルム・デザインウィーク関連のテンポラリーな展示をいくつか。デンマークの「FRIENDS & FOUNDERS」と「LE KLINT」、日本の「ARIAKE」と「2016/」が一緒に新旧のコレクションを展示した「THE ARCHIVE」は特に印象深いものでした。会場は1890年に建てられたスウェーデンの旧公文書館で、「MY RESIDENCE」誌のHanna Nova Beatriceがキュレーション。北欧においてコンテンポラリーデザインがどんな立ち位置にあるかを伝える展示だと感じました。

ストックホルム・デザインウィーク

この「THE SCULPTOR'S RESIDENCE」という展示も、ベッドブランドの「DUX」とインテリアブランドの「MENU」が組んで開催。デンマークのNORM ARCHITECTSとスタイリストのLinnea Ek Blæhrがキュレーションして、彫刻家の住まいをモチーフに職住一体空間を提示しました。特に存在感があったのはNicholas Shureyのスカルプチャー。アーシーな色合い、自然素材の多様、タイムレスなフォルムはここしばらくの北欧のメインストリームです。

ストックホルム・デザインウィーク

郊外の会場で開催されるストックホルム家具照明フェアからも、いくつか印象に残ったものを。スウェーデンのブランドで、インドアでもアウトドアでも使えるステンレス家具を豊富に揃える「DESIGN OF」。ワゴンはCarina Seth Anderssonがデザインしたもの。

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ベルギーの「VALERIE OBJECTS」の新作は、注目の新鋭 Destroyers Buildersによるコレクション。メインはソファですが、フリーフォームのアルミ製のトレイにも惹かれました。

ストックホルム・デザインウィーク

ARTEK」のためにRonan & Erwan Bouroullec(ロナン & エルワン・ブルレック)がデザインした「ROPE CHAIR」も、2月のストックホルムの展示が初披露。どちらかというと静的なイメージのあるARTEKで、この椅子の特徴的な素材であるロープを使って椅子を吊るすディスプレイに意外性がありました。

ストックホルム・デザインウィーク

ストックホルム・デザインウィークは昨年も取材したので(その様子はこちら)今年はスキップしようかとも迷いました。しかし、スウェーデンに住む10代の環境活動家、グレタ・トゥンベリの世界的な評価もあり、サステナビリティへの意識が最新のデザインにどう表現されるか引き続き関心がありました。実際のところ劇的な変化があったわけではありませんが、現地のブランドやデザイナーに以前から根づいている環境への取り組みは着々と影響力を増し、またいっそう洗練されてきたように感じます。過去の文化やものづくりからの学びを、その動きの中に多様に生かしているのも興味深いところ。地に足のついた未来志向とでも言うべきスタンスは、デザインウィークに限らず、ストックホルムという街のいろいろなスポットに感じることでもありました。

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